Part4:プレゼンテーション編

 Part4では、プレゼンテーションSaaSについて詳しく見ていく。オフィススイートではない単体のプレゼンテーションSaaSについてもここで取り上げる。それぞれの機能の比較を表3に示す。
 最初にMS PowerPoint 2007で画面43のプレゼンテーションを作成した。これをプレゼンテーションSaaSで取り込んだときにどのような表示になるかで互換性を確認する。
表3(Office PPT.xls):MS PowerPoint 2007とプレゼンテーションSaaSとの機能比較表
機能
PowerPoint 2007
Google プレゼンテーション
ThinkFree てがるプレゼン
Zoho Show
Presentation Builder
pptファイルを開く
×
pptファイルを保存
×
×
×
htmlファイルを保存
×
画像として保存
×
×
×
印刷プレビュー
×
×
×
切取/コピー/貼り付け
アンドゥ/リドゥ
×
×
右クリックメニュー
フォント指定
文字サイズ指定
文字色指定
影付き文字
×
×
右/左/中央揃え
両端/均等揃え
×
×
箇条書き
スタイル設定
×
×
×
テンプレート/テーマ設定
×
検索/置換
×
×
×
表の挿入
×
×
×
図の挿入
図形作成
×
×
テキストボックスの挿入
ヘッダ/フッタの挿入
×
×
×
アニメーション
×
×
×
スライドショー
×
スペルチェック
×
×
×
拡大/縮小表示
×
×
×
○:機能あり
△:機能制限あり
×;機能なし

画面44:PowerPointで作成したプレゼンテーション。

Googleプレゼンテーション (https://docs.google.com/)

 「Googleプレゼンテーション」のPowerPointとの互換性はかなり高い。GoogleプレゼンテーションでPowerPointのデータを開くと、画面45のようにほぼPowerPointと同じ表示になる。GoogleプレゼンテーションでアップロードできるのはPowerPoint形式のみ、ダウンロードできるのはhtml形式のみと種類が少ない。
 機能としては、必要最小限のものだけしかないが、画像の挿入やテキストの編集といった基本的な作業はできる。アニメーションやビデオ、サウンドなどの機能はなく、マルチメディア時代としてはさびしい感があるが、Web上でそこまでやる必要もないかもしれない。その他の機能としては、変更履歴を元に古いプレゼンテーションに戻すことができることや、共有や公開がボタン1つでできる点も特徴だ。機能が少ないため操作がわかりやすいのも特徴になるかもしれない。

画面45:PowerPointで作成したプレゼンテーションをGoogleプレゼンテーションで開いた画面。ほぼPowerPointと同じ表示になる。

ThinkFreeてがるプレゼン (http://www.thinkfree.co.jp/common/signin.tfo)

 「ThinkFreeてがるプレゼン」も、他のThikFreeツールと同じく、機能が非常に豊富で、完成されたツールに仕上がっている。やはりJavaで作られているので、起動や表示の切替に時間がかかる点も同じだ。
 ThinkFreeにアップロードしたPowerPointプレゼンテーションをThinkFreeてがるプレゼンで開くと、最初は閲覧モードで開かれる。この状態ではサンプルのプレゼンテーションがまったく表示されない。これを編集するために「パワーエディット」ボタンをクリックすると、「ThinkFree Premium」をダウンロードするかどうか聞いてくる。ここで「Continue using Power Edit」をクリックすれば、ThinkFree Premiumをダウンロードすることなくパワーエディット機能を利用することができる。
 パワーエディットモードでPowerPointプレゼンテーションを開くと、画面46のように正しく表示されるようになる。グラフの種類や色までそっくりで、この状態ではPowerPointとの互換性は非常に高い。表の作成や図の挿入、図形の作成機能はもとより、アニメーション (画面47) やスライドショーまで、PowerPointの主要な機能は揃っているので、ほとんど機能に不足はない。メニューの階層もPowerPoint 2003に良く似ており、PowerPointユーザーなら使い方で戸惑うことはないだろう。
 ThinkFreeてがるプレゼンでは、PDFでの保存にも対応している。残念ながらThinkFreeてがるワープロのように、PowerPoint 2007のpptx形式での読み込み/保存はできない。

画面46:パワーエディットモードではすべてが正しく表示される。

画面47:アニメーションの設定画面。

Zoho Show (http://show.zoho.com/)

 「Zoho Show」は、そこそこの機能を備えたツールだが、Zoho WriterやZoho Sheetと違って日本語化されていない。またZoho WriterやZoho Sheetに比べてUIが洗練されていないので、このスイートの中ではかなり異質感がある。PowerPointとの互換性はあまり高くはない。PowerPointのプレゼンテーションを読み込むと画面48のように縦横の比率が変わってしまう。エクスポートもhtmlだけしかサポートされていない。
 機能としては図の作成や挿入、スライドショーなどが可能で、それなりのプレゼンテーションを作成することができるが、使い勝手はあまりよくない。
 「Switch To」をクリックすると、簡単にワープロや表計算などの他のツールに切り替えられるのは便利だ。共有では、閲覧のみ、あるいは編集可を設定でき、公開ではWebやブログへの公開が簡単にできる。

画面48:PowerPointプレゼンテーションをインポートすると縦横の比率が変わってしまう。

Presentation Builder (http://www.thumbstacks.com/signin.php)

 「Presentation Builder」は、ファイルの読み込み (インポート/アップロード) をサポートしていない。またコピー&ペーストもできないので、PowerPointのプレゼンテーションなどの既存のデータを持っていくことができない。あくまでもPresentation Builder上で作成したプレゼンテーションを公開するという形でしか利用できない。その意味ではPowerPointとの互換性はまったくない。
 機能としても、スライドショー機能はあるものの、図や文字の挿入や文字の編集しかできず、図形の編集機能はない。その意味ではたいしたことはできない (画面49)。データのエクスポート/ダウンロードもできないが、htmlをブラウザで表示することができるので、ブラウザの機能を使ってhtmlを保存することは可能だ。

画面49:Presentation Builderでプレゼンテーションを作成する。

Part5:番外編

 Part5では、ワープロ、表計算、プレゼンテーション以外のSaaSツールで興味深いものをいくつか紹介する。

Zoho notebook (http://notebook.zoho.com/)

 「Zoho notebook」は、従来にない新しいツールだ。notebook (メモ帳) という名前からはテキストエディタを想像するが、実際はテキストエディタの枠に収まらないユニークなツールだ。メモ帳というよりガラクタ帳といったほうがふさわしいかもしれない。ここにはテキストだけでなく、色々な画像、サウンド、ビデオ、html、URL、RSS、各種ファイルなど、なんでも置くことができる。
 置くだけならただのストレージにすぎないが、その共有・公開ができ、文字の入力や簡単な図形描画ができるので、複数のユーザーがこのガラクタ帳を共有しつつ、文字や図で討議を行ったり、データのやり取りができる。チャット機能もあり、まさにコラボレーションツールと言ってよいだろう。UIも洗練されているので、使って楽しいツールだ。

画面50:Zoho notebookの画面。文字や図を始め、なんでもありのガラクタ帳だ。

Zoho DB & Reports (http://db.zoho.com/)

 「Zoho DB & Reports」は、SaaSでは珍しいデータベースだ。SQLもサポートしており、データベースとしての基本的な機能は揃っているので、かなり使えるツールだろう(画面51)。
 データベースソフトからのデータ取り込みはできないが、csv、tsvなどのテキストデータのインポートはできる。ただし、ファイルサイズが最大1MBに制限されている。また、Excelからコピー&ペーストによるデータコピーも可能だ。ただ、この場合に日本語は文字化けする(画面52)。Zoho DB & Reportsは英語版だが、直接に日本語を入力・表示することはできる。エクスポートはcsvのみになる。Accessのデータをインポート/エクスポートできないのは残念だが、Accessを持っていない場合に、ちょっとデータベースを使いたいときには役に立つだろう。

画面51:サンプルデータベースを開いたところ。

画面52:Excelデータをコピー&ペーストで取り込んだもの。日本語が文字化けしている。

Writeboad (http://www.writeboard.com)

 「Writeboad」は、シンプルなテキストエディタだ。ユーザー登録をすることなくすぐに使えるのも便利なところだ。Writeboadは英語版だが日本語の入力・表示に問題はない (画面53)。ボールドやイタリックといった文字修飾が可能だが、それ以上の凝った機能はない。作成したテキストはtxtまたはhtmlとしてダウンロードできる。またテキストを作成すると、そのテキストを閲覧するためのurlがメールで送られてくるので、それを共有し、コメントを付加できる。ちょっとした連絡などに便利だろう。

画面53:Writeboadの入力画面。日本語も入力・表示できる。