Windows XPのリモートアシスタンスは、Windows XPユーザーがネットワークを介して助け合うための機能だ。この機能により上級者 (ここでは支援者と呼ぶ) は自分の画面上で初心者 (ここでは依頼者と呼ぶ) のデスクトップを確認することができる。依頼者の許可があれば、支援者が依頼者のマシンをリモート操作して問題を解決することもできる。企業にとっても、ヘルプデスクを開設して、ネットワーク上のユーザーをサポートするためのツールとして利用できる。
リモートアシスタンスは、リモートデスクトップと同じTerminal Service技術に基づいている。したがって、機能的にはリモートデスクトップと似ているが、いくつかの点で違いがある。
1) リモートデスクトップでは、ローカルPCが操作中の画面はリモートPCに表示されないのに対し、リモートアシスタンスでは依頼者と支援者が同じ画面を見ることができる。さらに、リモートアシスタンスでは同時に両者がキーボードやマウスを使って操作することもできる (推奨はされないが)。
2) リモートアシスタンスでは双方が合意しなければリモート操作ができない。
3) リモートアシスタンスでは、依頼者と支援者が文字や音声を使ってリアルタイムにチャットすることができる。
依頼者と支援者の双方がWindows XP (またはWindows .NET Server) を実行している必要がある。その他のOSでは、依頼者にも支援者にもなることができない。また、リモートデスクトップではリモートPCはWindows XP Professionalである必要があったが、リモートアシスタンスでは、依頼者、支援者のどちらもがWindows XP Home Editionであってもよい。
ネットワークに関しては、両者がTCP/IPで接続されていることと、3389ポートで通信ができる必要がある。また、インターネットを介して接続する場合は、両者が基本的にグローバルIPアドレスを持っていなければならない。ただし、Windows XPの「インターネット接続の共有」(ICS) 機能で、マシンにプライベートIPアドレスが割り当てられている場合でも、Windows XPのICSはポートの転送をサポートしているためリモートアシスタンスを利用することができる (Windows 2000またはWindows 98SEのICSは不可)。ICS以外の方法でプライベートIPアドレスが割り当てられている場合は、ルータやゲートウェイがユニバーサルプラグアンドプレイ (UPnP) に対応しているか、ISPがリモートアシスタンスに対応していれば利用することができる (不明な場合は、ルータのマニュアルを参照したり、ISPに問い合わせていただきたい)。依頼者と支援者のどちらかがUPnPに対応していないルータやゲートウェイを通している場合は、Windows Messengerを使用してリモートアシスタンス接続を確立することができる。詳しい方法は「Windows XPオフィシャルマニュアル」(日経BPソフトプレス刊) を参照していただきたい。
また、依頼者は、支援者に招待状を転送できなければならない。この作業は、[ヘルプとサポート センター] からOutlook ExpressまたはWindows Messengerを使って自動的に実行することができる。あるいは、いったんファイルを保存して、別の方法でファイルを転送してもかまわない。
なお、Windows XP Home Editionの場合、依頼者側は、Ownerアカウントを使用する必要がある。
ここでは依頼者が支援者に招待状を送ってリモートアシスタンスを開始する方法について説明する。同じドメインに所属するコンピュータ同士であれば、支援者側からリモートアシスタンスを提供できるため、依頼者が招待する手順を省くことができる。
1. [スタート] メニューから [ヘルプとサポート] をクリックして、[ヘルプとサポート センター] を表示する。
画面27 [スタート] メニューから [ヘルプとサポート] をクリックして、[ヘルプとサポート センター] を表示する
2. [リモート アシスタンスで友人を招待し、友人のコンピュータをこのコンピュータに接続する] をクリックする。[リモート アシスタンス] ページが表示される。
画面28 [リモート アシスタンスで友人を招待し、友人のコンピュータをこのコンピュータに接続する] をクリックすると、[リモート アシスタンス] ページが表示される
3. [友人を招待する] をクリックする。
画面29 [友人を招待する] をクリックすると、連絡方法を選択する画面が表示される
4. 連絡方法は3通りあり、Windows Messengerを使用する方法、電子メールを使用する方法、招待状をファイルとして保存する方法のいずれかを選ぶことができる。連絡方法を1つ選び、指示に従って招待状を送信する。電子メールまたはファイルに保存する方法を選択すると、セッションをパスワードで保護することができる。また、招待状の有効期限も設定する。セッションの終了後に有効期限が残っていても、必要がなくなれば、手順3の [リモート アシスタンス] ページに表示されている [招待の状態を表示する] リンクをクリックして、いつでも期限切れにすることができる。
5. 招待状を受け取った支援者には、依頼者が設定したパスワードの入力を求める画面が表示される。パスワードを入力すると、リモートアシスタンスのセッションを開始できる。
画面30 招待状を受け取った支援者には、依頼者が設定したパスワードの入力を求める画面が表示される
6. 支援者がセッションを開始すると、支援者が使用している招待状が有効期限内にあることと、支援者が入力したパスワードが正しいことを確認し、支援者がセッションの開始を希望していることを伝えるメッセージが依頼者に表示される。
画面31 支援者がセッションの開始を希望していることを伝えるメッセージが依頼者に表示される
7. 依頼者が [はい] をクリックすると、依頼者には画面32のウィンドウが表示される。また支援者には画面33の [リモートアシスタンス] コンソールが開く。この時点で、支援者は、依頼者のコンピュータのすべての情報をリアルタイムで確認できるようになる。またウィンドウの左側欄で文字によるチャットができる。
画面32 依頼者には [リモートアシスタンス] のウィンドウが表示される
画面33 支援者には [リモートアシスタンス] コンソールが表示される
8. ここで、[会話の開始] ボタンをクリックすると、音声による会話 (チャット) ができるようになる。
画面34 [会話の開始] ボタンをクリックすると、音声による会話ができるようになる
9. 支援者はコンソールの [制御] ボタンをクリックして、依頼者のコンピュータの制御を要求することができる。このボタンをクリックすると、依頼者に、支援者が制御を要求していることを示す画面35のメッセージが表示される。
画面35 支援者が制御を要求していることを示すメッセージが表示される
10. 依頼者がコンピュータの制御を許可すると、画面36のメッセージが支援者に表示される。
画面36 依頼者がコンピュータの制御を許可すると、このメッセージが支援者に表示される
11.
これで依頼者と支援者の両方がキーボードおよびマウスを使ってコンピュータを操作できるようになる。
この状態では、どちらからの入力も受け付けられるため、マウスが正しく動作しなくなる可能性がある。支援者の操作中は、依頼者側ではマウスの操作やキーボード入力を行わない方が安全だ。
なお、依頼者が制御を停止してもリモートアシスタンスのセッションそのものは停止されないため、支援者は引き続き依頼者のデスクトップを見ることができる。
画面37 支援者が依頼者のコンピュータを操作しているところ
Windows Messengerサービスのユーザーは、リモートアシスタンスを使って相手を招待することができる。Windows Messengerはリアルタイムで動作するため、支援者が現在オンラインかどうかがわかるので、招待状を送るのに一番簡単な方法だ。また、この方法では、双方のコンピュータが同じネットワーク上にない場合や、ファイアウォールまたはNAT経由でインターネットに接続している場合にもリモートアシスタンスが利用できる。
Windows Messengerサービスの使用中は、[ヘルプとサポート センター] を開くことなく、Windows Messengerを開き、次の手順で招待することができる。
1. [ツール] メニューの [招待する] をクリックする。
2. [リモート アシスタンス] をクリックする。
3. リモート アシスタンスを依頼したい相手をクリックする。
選択された相手には、リモート アシスタンスのセッションを希望するメッセージが送信される。相手は、[承諾] または [辞退] をクリックして応答する。
リモートアシスタンスを使って、依頼者から支援者あての電子メールを作成し、招待状を添付して送信することができる。支援者が添付ファイルを開くと、依頼者がパスワードを指定している場合にはパスワード要求画面が表示され、「リモートアシスタンスを使う手順」の順序で操作できる。
画面38 電子メールで招待状を送信する
リモートアシスタンスでは、[インターネット オプション] の [プログラム] タブに指定されている電子メールクライアントが使用される。リモートアシスタンスは、Simple MAPIを使って電子メールの作成を手助けする。電子メールクライアントにはSimple MAPIをサポートしていないものや、[コントロール パネル] の [インターネット オプション] のオプションとして表示されないものもある。その場合は次の「招待をファイルとして保存する」方法を利用する。
依頼者の電子メールクライアントでSimple MAPIがサポートされていない場合や、依頼者が電子メール以外の方法で招待用のファイルを支援者に転送したい場合には、招待状をファイルに保存することができる。
画面39招待状をファイルに保存する
この方法を使用すると、電子メールを使用する場合に自動的に作成、添付されるファイルを、ローカルドライブやネットワーク共有フォルダに保存することができる。保存されたファイルは、Simple MAPIをサポートしていない電子メールクライアントを使って電子メールに添付したり、ネットワーク共有フォルダやフロッピーなどに転送することができる。支援者は、受け取ったファイルをダブルクリックして招待用のファイルを開き、リモートアシスタンスのセッションを開始できる。(2002.6.9)